下記11月号のオリジナル提出原稿。
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図1:図録20頁下段左「街の明かり星降る夜」米国高校生作品
図2:図録22頁下段左「津波の猛威」米国高校生作品
図3:図録23頁上段「てんやわんやの生活」米国大学生作品
図4:図録24頁下段左「スーパーマンガ」米国大学生作品
図5:図録28頁下段中央「新しい始まり」米国大学生作品
4コマアート巡回展示会作品紹介(11月号):
子どもの描画に表れるグローバル化の波?:マンガ vs. アメリカンコミック
知っているようで以外と知らなかったこと(もしくは思い込み)というのがままある。今更であるが日米の美術教育の相違についても同様のことが言える。例えば、ナショナルカリキュラムのない米国と存在する日本という美術教育の理念システムの在り方。国によって定められた統一の学習指導要領で勧められる日本の美術教育と州によって異なるスタンダード(Standards=教育理念)で、さらに地域もしくは学校毎に異なる指導方法をとる米国。もちろんこの差は各国の社会的文化的背景を反映している結果である。が、米国の美術教育内で実際に仕事をしてみると、これが単純に割り切れないと思うようになってきた。確かに指導の方法論(カリキュラム内容)は異なるものの、根底に流れる美術教育理念は共通しているのである。現在1980年代に広がったDBAE (Discipline-based Art Education:ディービーエーイーと発音)がその中心を担っており、この理念は各州のスタンダードに現在色濃く反映されている。 DBAE の4つの理念「造形、美術&文化史、美学、批評」(Art making, Art History, Aesthetics, Criticism) を念頭にカリキュラムを作り、各教師がそれぞれの方法論で美術を指導するのが定着している。また、共通の教科書というものの存在しない米国だが、教科書会社というのは無数にあり、これらの教科書を開けてみるとそこにある美術教育理念は共通していることが多い。それは目次などから一目瞭然である。日本ではどうなのだろう?学習指導要領に沿って皆実際に指導しているのだろうか。「米国の方が理念的にはナショナルカリキュラムだね。」と言った日本の友人の言葉が印象深い。知っているようで知らなかった美術教育の実態が日米の比較においてもいろいろあるが、それはまた次の機会に。
さて中身が予定していたタイトルとどんどん離れていってしまいそうなので、ここで無理矢理もどすことにする。一方で、こどもたちの絵の世界を俯瞰してみると、国によって異なりその差が顕著とおもいこんでいたものが、結構その差がなくなってきていることに最近気付いた。これは明らかに情報の流動化がもたらした描画におけるグローバル化の結果?と言えなくもない。例えばこの4コマアートの作品群をみてみると、日本のマンガの影響が予想以上にこどもの描画の世界に広がっていることがわかる。10年前には見られなかった現象である。今月はそんな作品群を5点程図録の中からご紹介。図1&2は日本のマンガの影響( 大きな目、細い線だけの鼻等々)がその人物にしっかりと表れている。逆に図3&4はアメリカンコミック的な絵柄の作品。新聞の4コマ作品として出てきそうな絵柄の図3。図4はアメリカンコミックの代表格「スーパーマン」を元に、「スーパーマンガ」としたユーモア作品。絵にではなくコマ割にマンガの影響が出ている。図5は、絵柄そのものは写実的でアメコミ的な作品に見える。が、よく見てみると現在米国で最も人気のあるマンガアーティスト天野の絵柄で「源氏物語」を模写しているところが、日本のマンガとアメコミの融合ともいえる生徒作品。日本のマンガは日本というローカルから世界的へとグローバル現象となり、それが子どもや若者達の描画に「美意識の変化」として顕著にあらわれているのが今である。