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Saturday, September 11, 2010

教育美術連載 (2010年9月号):主流派に属さない「おやっ?」な作品達

図1:図録13頁上段右「Rainbow: A little Happy Day(虹:ほんの少し幸せな日)日本小学生作品

図2:図録16頁下段右「生命(いのち)」日本中学生生徒作品

図3: 図録31頁下段「赤富士の真実」日本大学生作品

4コマアート巡回展示会作品紹介(9月号):

主流派に属さない「おやっ?」な作品達

July 31, 2010

Masami Toku

2008年から4コマアートを公募して3年、すでに千点近くの作品が日米から集まった。 「僕(私)たちの世界で今何か起こっているか」の主題のもと、自分たちの回りで起こっている事、小さな事大きな事に関わらず、気付いたことを4コマ(起承転結)の形で表現してみよう、ということだが、 先の8月号でもお伝えしたようにこどもたちの表現したテーマは、日米に限らず共通の傾向がある。「温暖化現象」や「大気汚染」を始め、「動物虐待(意図せずとも結果的にそうなったものも含む)」などなど現代社会に警鐘を促す、大きなテーマを描いているものが主流である。メディアの影響も大きいのだろうが、こどもながらに社会的問題を自分の目を通してきちんと捉えているところに驚かされる。が、これら主流派に属さない、そしておやっ何を伝えたいのかとおもわず興味をそそられるそんな作品にも時々出会うことがある。今回はそんな中から3点紹介してみたい。

Rainbow: A little Happy Day(原題)」(図1)。窓から差し込む光が、小学校の校舎の廊下だろうか、床に虹を映し出しているという情景を表現している。日常の中、偶然に出会った些細な出来事、そしてそんな小さな一瞬のことが一日を幸せにしてくれるという作品。そうそうこういう小さな幸せを心の支えに、私たちは生きていけるのよねと共感できるほのぼの作品である。実はこの作品、昨年2009年度奄美大島の皆既日食イベント関連(展示会&講演会)で来島してくださった少女マンガ家、萩尾望都(もと)氏が好きな作品として選んでくださったものでもある。

「生命(いのち)」(図2)は、花の咲くプロセスを通して命の輝きを描いた美しい作品。実はメッセージというより、コマ割の構図がとても日本的だったので、図録掲載に決めた作品。しかし、この作品テーマのいきさつを感じさせるような出来事に先日偶然出会った。この夏友人から奄美をテーマに作品を作り続けている奄美在住のとてもよいアーティストがいるので、一度会ってみないかとお誘いをうけて出かけた。まだ四十台の方で、子だくさん(八ヶ月から高校生まで5人)、数年前脳梗塞を煩い半身麻痺になり、木彫りのミニチュア作品を作られているとのこと。リハビリを兼ねて習い始めたという蛇味線(じゃみせん)をひきながら語る口調は穏やか、しかし作品を通して奄美大島の文化と歴史を紹介したいという熱い心を持たれた方でもあった。話しの流れで、お子さんの一人の作品が図録に載っていることを知り、改めて作品を見直し、思わずはっとした。この作品は彼の実際の体験(家族の出来事)を通して描かれたメッセージだったのである。

最後は暑い夏を涼しくさせる一筋の風のような作品「赤富士の真実」(図3)。図録の中にも作者の説明があるように、北斎の赤富士を逆さに見立てたら、夕焼けの雪山の間にたたずむ木々に見えたというもの。当たり前のように見えている情景が角度を変えて見る事により、全く別のものに見えてくる。静かなしかし示唆に富んだ詩情あふれる作品であり、多角的な視点で描かれている力作でもある。

4コマアート作品との出会いはまたその作品にかかわる人たちとの出会いでもある。今月はそれを感じさせる作品の中からいくつか紹介させていただいた。公募は締め切りなしの継続中。これからもいろんな作品に出会えることを楽しみに、日本での夏を終え、そろそろアメリカへの帰国の日が近ついている。

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