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Friday, April 24, 2009

2009 NAEA報告 其の3 総括: A report from 2009 NAEA Part 3 (Abstract)


今回のNAEAでまず気付いたこと、カタログがシンプルで薄くなったという事。昨年日本に滞在していたため、参加していないので、昨年をのぞく今までのものとの比較ということになるけれど、紙質がグロスの高級感で派手なものから、普通の紙質に代わり、カラーの多色刷りから白黒ではなかったものの、限定カラーになっていた。また少し薄くなっていた感じがする。

発表の数は例年通り、千件を超えるはずだから、発表件数とかの理由ではなさそう。これはたぶん現在の経済市場の圧迫を反映して、広告を出していたスポンサーが減ったからではないだろうか?想像の域を超えない私見に過ぎないけれど。

さて学会の中身である。いつものようにNAEA学会は、発表目的や聴衆対象の種類を指定して公募申請するようになっている。公募締め切りは通常学会の9〜10ヶ月以上前の6月中旬から7月上旬。その結果の発表なので、カタログもその分類毎に整理されていて、多くの発表の中から、選びやすいようになっている。(一般発表は25分と50分の2種類で、同じ時間帯に20以上の発表が重なるのである。)

例えば発表目的別の分類では、「Research(進行中の研究発表)」「 Museum Education(美術館教育)」「Technology (テクノロジー)」「Curriculum & Instruction(カリキュラム&指導方法)」等々という風に。またNAEAの関連組織である特別テーマグループもそれぞれ発表枠を持っていて、そこに提出された公募の中からも選ばれている。例えば私の所属する「USSEA (United State for Education through Art)」とか、「Women's Caucus(女性問題)」とかね。あっそうそう日本では美術教育のテーマの範疇には絶対に入りそうにない「Lesbian/Gay/Bisexual/Transgendered Issues Caucus」というグループも米国では存在します。そして対象学年毎の 分類では、もちろん 「Elementary(小学校関連)」「Middle(中学校)」「Secondary(高校)」「Higher Education (大学)」等々。

また毎日「特別発表(招待発表」)や「General Session(美術教育全般や現在今最もホットなテーマを全体で討議)」も開催。まともに回ろうとすると、ぐったりするので、自分の行きたいものを厳選して行く事にしている。

またいつも開場内で開かれている、美術(教育)関連会社(材料関係)の出店で、フリーのサンプルをもらうのも楽しみ。何せ百件以上の会社がボールルーム(ダンスホール)一杯のスペースに広がっているので、回るだけで、結構時間がかかる。が楽しい時間でもある。いつもは発表準備に時間をとられてほとんど行くことができない私も今回ばかりは、時間を取ってゆっくりと回った。一回りすることには、もらった宣伝用のバックが一杯になりました。今回のお気に入りのサンプルはNAEAから貰ったゴッホのフィギュアー(写真)。息子に持っていったがいらないと言われたので、オフィスに飾っておく事にする(笑)

さて肝心なこと、今年の学会の特徴はどうだったかである。毎年カタログに掲載されている公募に通った発表テーマをざっと眺めて、今年の美術教育の傾向をはかることができる。今年も例年同様「Visual Culture」がまだいきおいを持続している。(私もこれに関するテーマで発表を続けているので、ちょっとホッと)それに加えてメディア&デジタル関係やリテラシー関係の発表が特に今年は多いような気がする。それにである「Re」と単語の前につく、今までの理論等の再考的なものが、発表内容の中に多いのを感じた。そして美術教育以外の分野(特に経済や世界で話題になっている)「Globalization(グローバル化/国際化)」や「Sustainability(環境保護&維持活動)」のようなテーマなど、美術教育の中でどのように位置づけるのかの討論が今まで以上に活発になってきているのを感じる。まさに「Interdisciplinary (越境:各分野を超えて)」の時代。ますますそれぞれの分野のボーダーラインが薄くなり、米国の美術教育は何でもありの時代の到来。ここ5〜6年特にそれを強く感じる。

また「Cultural Diversity(文化の多様性)」と称し、1980年代以降の「Multiculturalism(多種文化主義)」関連のテーマは今だもって健在である。しかししかしである。それが特定の国の文化や教育システムの紹介、つまり特定の国の名前が発表タイトルについた場合(例えば台湾とか中国とかね)、観客の数が極端に少ないのが気になった。例え、その発表者が米国で著名は人たちであってもである。これは何を意味しているのだろう。穿った見方をすれば、米国では文化の多様性とは実は表面上の言葉だけで、誰も実際には、他国それぞれの美術教育の傾向や特徴には興味を持っていないということなのかもしれない。もしそうだとすればそれは実に悲しい。

現在アジアからの参加者もかなりの数があり、聞いた話しによると韓国から米国に滞在している留学生や大学教員関係は20人を超えるそうである。また台湾は例年より少ないと前置きしながらもやはり20人を超えるとのこと。その他、香港、マレーシア、シンガポールなどなど。さて日本からはというと私一人(といっても私は米国出身になるので、実質的には米国とカウントされるかも)。それはさておき、アジアを中心にした特別テーマグループを作ろうという動きが出て来ている。それが現実になればとてもうれしい。たぶん参加者は最初は少ないだろうが、はじめの一歩が肝心なので、まずは始めようというところだろう。もちろん私もその創始者メンバーの一人になる予定である。

来年2010年の開催地は首都ワシントンDCの近く、東海岸のボルティモア (4/14-18, 2010 - Baltimore, Maryland)、それに参加は難しいとしても、その翌年2011年のシアトル(3/18-21, 2011 - Seattle, Washington)での開催には、たくさんの日本からの参加者を期待している。

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