●学習題名
—米国における鑑賞教育の在り方と実践事例—
●執筆者名
徳 雅美
カリフォルニア州立大学チコ校
●学年、活動内容区分
中学1〜3年(7th〜9th grade)/鑑賞活動
●事例概略
米国の学校教育における鑑賞教育の在り方を日本の鑑賞教育と比較し、また具体的にどのように鑑賞教育が行われているのかをDBAEと VTS理論の比較を通して検討していきたい。文化的背景の異なる米国における鑑賞教育ではあるが、その現状を検証することは、今後の日本における鑑賞教育の意義を再認識することにもなると信じている。
1 はじめに(米国における鑑賞教育の在り方)
昨今、美術教育における鑑賞教育の重要性がさかんに語られ、また方法論においてもその可能性が言及されている。しかし、「鑑賞」という言葉のもつ多義性から鑑賞教育の定義が決定されていないのもまた事実である。美術教育における鑑賞教育とはいったいどういう教育なのであろうか。芸術を鑑賞する際に起きるであろう美的感性を高めるための教育なのか、芸術を理解するための知的能力を高めるための教育なのであろうか。またこの両義を含んでいるのか。
「鑑賞」という言葉を英語に訳すと「アプリシエーション(Appreciation)」註1)となるようだが、その言葉の中には「鑑賞する(見て楽しむ)」という意味と同時に「考える」という意が含まれている。米国でいうところの鑑賞教育は「感じさせる」のではなく「考えさせる」教育ということができる。その語意を反映するかのように、現在米国において一般的に行われている鑑賞教育は、一言でいうとヴィジュアルリテラシー(Visual
Literacy) を高めるための教育であると言及できる。直訳すると「視覚読み書き能力」となるが、これには二つの定義がある。一つは芸術に接した時、その芸術作品を批評理解する能力註2)であり、視覚思考能力(Visual Thinking Ability)とも言い替えることができる。一つは芸術を鑑賞した時の嗜好の要因を自分の言葉で表わすことができる能力註3)である。第二ので定義については「なぜ私はこの作品が好きでこの作品は好きでないのか」を思考し、さらに自分の言葉で表現できる能力といえる。
2 米国の学校教育における鑑賞教育の事例
具体的にどのような「鑑賞教育」が米国において、一般的に実施されているのだろうか。日本と異なり、国定の「学習指導要領」を元にしたカリキュラムなど存在しない米国において、一般的な「鑑賞教育」方法を指摘するのは至難といわざるをえない。が、米国において最も広く浸透している美術教育理論であるDBAE(ディーヴィーエーイーと発音)における鑑賞教育の捉え方と、実践において最近富に評価されているVTS(ヴィティーエスと発音)を比較することによって、米国における鑑賞教育の実態を紹介してみたい。
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