米国巡回少女マンガ展示会:ヴィジュアルカルチャーと美術教育 (May 2006)
昨年10月から北カリフォルニアのチコの街を皮切りに全米を西から東へと横断する形で米国巡回少女マンガ展示会「Shojo Manga! Girl Power!: What can shojo manga tell you? (少女マンガ!少女の力!:少女マンガは何を語るか?)」を開催している1)。なぜ今米国で「少女マンガ展」なのか?開催へのいきさつと美術教育との関連性についてこの場を借りて紹介させていただきたい。
米国のマンガ事情
日本の「漫画● まんが●マンガ」から世界のMANGAになったと言われて久しい。1980年代アジアでの海賊版の隆盛からヨーロッパへ、そして21世紀初頭現在、米国市場においてすら、日本のマンガが元ネタであると明らかにわかる商品であふれている。またマンガ関連の展示会も盛んである2)。しかし、日本のマンガが近代マンガとして発展してきた歴史的背景、特徴、そして社会における影響等についてその価値が正しく認識されているかどうかは、かなり疑問である。そこで、日本近代マンガの大きな特徴のひとつである「少女マンガ」に焦点を当てた展示会を開催することにより、他のコミック(例えばアメリカンコミック)と異なる日本マンガの特異性とその価値を広く紹介したいと考えるようになった。
少女マンガ展示会概要と背景 .........
.................. (省略)..........
こどもの描画発達とマンガの影響
さて、そもそもなぜ一大学教員に過ぎない私がマンガ展示会を開催するに至ったのか。そのことを不思議に思う人も多いらしく、同様の質問を何度か受け取った。理由はいろいろあるが、そのきっかけは10年程前に遡る。当時「日米のこどもの描画比較研究」に取り組んでいたが、その結果から美術教育学において、一般的に言及されている「こどもの描画発達の普遍性の理論4」に異議を唱えることになった。その根拠となったのが、他国のこどもたちの描画には見られない、日本人のこどもの描画上にのみ顕著に現われるマンガの影響である。それは単に人物表現のみならず、空間の表現方法に、その顕著な差が見られた。描画の発達理論における文化的特異性の問題、またこどもの描画に影響を与える美意識の発達という観点から、日本のこどもたちの描画に最も影響を与えたマンガに興味を持ち、他のメディア媒体(例えばアニメや米国のコミックなど)と比較しながらマンガの特異性とは何なのか、を研究していくことになった。我々を取り巻くこの世界に多くのメディアが存在する中でなぜマンガなのか、またマンガの影響とはどういった形でこどもたちの描画にそして認知の発達課程で現われるのか等々興味はつきない。結果、かつて少女マンガの読み手の一人に過ぎなかった私が、マンガの世界に深く拘わることになり、米国においてまだ評価されるに至っていない、少女マンガの価値と少女マンガ家の貢献を紹介したいと考えるようになったのである。.............................
No comments:
Post a Comment