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Wednesday, September 8, 2010

教育美術連載 (2010年6月号):「カテゴリーB」において人気のアート作品は?

図1:図録18頁「温暖化現象」米国生徒作品
図2:図録19頁上段左「時間は溶け去って行く」米国生徒作品

その他関連作品:
図3: 図録27頁下段右「所有、摂取、膨張、そして知覚」米国生徒作品

4コマアート巡回展示会作品紹介(6月号):
「カテゴリーB」において人気のアート作品は?

April 26, 2010
Masami Toku

今月は「カテゴリーA」ではなく、「B」作品の紹介をひとつ。これは「A」同様、「世界は今どうなっているのか?」というテーマで作品を4コマで作りあげるのは同じだが、4コマ(起承転結)の中に必ず1コマ、著名な作品を入れるところが異なっている。作成方法の流れとしては、まず著名なアートを一つ選んだ後、そのアート作品を自分の表現したいメッセージ内容に合わせ、オリジナルの持つ意味を変化発展させ、効果的に使うというところがポイント。結果としてオリジナル作品の意味から想像を超えたストーリが生まれている場合も多く、こどもたちの想像力の豊かさに改めて感嘆の思いで一杯になることもしばしばである。

小学高学年(5&6年生)を対象とした「カテゴリーA」と異なり、この「B」は、高校生以上に向けて主に公募したが、「著名作品」という概念に共通の作品を選んでいる傾向もあり、その際、同じようなメッセージが表現されている場合と、全く異なる場合の2つに分かれていてとても興味深い。

さて下記に紹介する三作品は人気作品の一つ、ダリの「記憶の固執(Persistence of Memory, 1931)」、を元に4コマに作られている。もちろんポイントはダリの絵の中の溶けている時計であり、そのイメージから生徒自身ストーリーを膨らませているのは共通しているが、全く異なるメッセージの三作品に仕上がっている。

図1のタイトルは「温暖化現象」(図録中18頁)。溶けていく地球、水位があがって行く都市、そしてその中で全てが溶けさっている様子を示すことで、この作品が作成された2008年以降、2010年現在ますます世界で議論されている注目のテーマを表現。パステルカラーの優しい色調と繊細な線の絵柄を通して、静かにしかし力強くそのメーッセージを伝えている。

一方、図2の「時間は溶けさっていく」(図録中19頁上段左)は、溶け去っている時計で時間の経過を表し、「誕生、成長、老い」そして最後のコマにダリの絵で、全ては同じ運命を辿ることを示唆している。

最後に、図3の「所有、摂取、膨張、そして知覚」(図録中27頁下段右)はとてもユニークな作品で、たぶん日本の生徒では思いつかない作品かもしれない。単純に見るときのこ(毒?)を食べた少年(青年)が幻覚(溶けている世界)を見ているシーン。この作品を見た瞬間アメリカでは一様に笑いが出る。このきのこをドラッグと置き換えて見てみるのは深読みしすぎだろうか。そう読むとこの作品の中に現代アメリカの若者の問題も浮き彫りにされているような気がする。

最初の二作品は高校生の作品。美術を選択科目として取っている学生達である。日本では美術科目の存続について議論が伯仲しているが、アメリカでは中学(&高校)で既に必須でなく、選択になって久しい。ただ選択といえ、日本と少し方向が異なる。美術を選択した場合、毎日美術の授業があるのである。これもひとつの選択科目としての方向性であり、結果としてかなり質の高い授業が展開されている。

最後の作品は私の教えている一般教養のクラス「Arts100: Art Appreciation- Multicultural View (芸術鑑賞学—多角的視点にて)」の生徒の作品。小論課題の一つとして毎学期授業の中で与えているもので、論文とこの4コマアートの提出を義務づけている。120名の学生中、約7−8割が高校出たての新入生で、アートの専門外の学生達である。この芸術鑑賞学のコースは米国の大学では一般教養の講義コースの一つとして定着しており、「What is Art? What is Art for?(アートとは何か?アートは何のためにあるのか?)を学ぶことになっている。優れた教科書もたくさん出ている。 日本の大学では「芸術鑑賞学」はどのように取り扱われているのだろうか?

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