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Thursday, September 2, 2010

教育美術での連載 (2010年4月号):4コマアート展示会紹介

前にこの4月から美術教育雑誌「教育美術」誌上で連載を始めることになったことをお知らせしたことがあるが(4/23記載)、今日その担当の目等(めら)さんから許可をいただいて、出版済みの原稿(ただし出版された原稿ではなく、その前のドラフト原稿)をここに掲載させてもらうことにした。興味のある方は、最終版もあわせて、教育美術誌上でご覧になっていただけれるとうれしいです(^_^)。批評等いただけるともっとうれしいのですが。

以下その最初4月号の原稿です。

4コマアート巡回展示会紹介 (教育美術2010年4月号掲載)

この4コマ(マンガ)アート公募展のきっかけとなったのは2001年からカリフォルニア州立大学チコ校の教員養成コースの中で実施した美術教育カリキュラムが元になっている。

当時米国の美術教育ではヴィジュアル(ポップ)カルチャー(Visual pop-culture)がトレンディーなテーマとして盛んに話題となっていたが、ヴィジュアルカルチャーの理論的な解釈と視覚イメージを通して社会をどう読み取るかの批評的アプローチが中心で、それに伴う効果的な実践カリキュラムについてはまだ試行錯誤の状態であった。

一方日本においては、当時ヴィジュアルカルチャーの中心を担っていたマンガが、日本を超え世界へと広がり、世界中のこどもたちを魅了し始めた頃でもあり、それが米国の美術教育界でも話題になり始めた頃であった。

それはまた、こどもたちを魅了してやまないマンガの人気の理由、そして子どもの認知や美意識に与えるマンガの影響など、マンガそのものがアカデミックなテーマとして話題になりはじめていた時期とも一致する。

他国のコミックには見られない、日本のマンガ独自の魅力とは何なのか。それがコミック共通の3つの構成因子(絵、言葉&吹き出し、コマ)のマンガにおける特異的発達並びにその使い方の妙にあるということは現在周知の事実である。またグラフィックノーベル(Graphic Novel)というマンガの代名詞にも現れるように、マンガで表現されるストーリー展開の質の高さが、男女年齢を超えて世界を魅了する要因になっている。

そこでこのマンガの特徴を使ってその魅力を損なうことなく、どのように美術教育カリキュラム(レッスンプラン:Lesson Plan)の中に採用していくのかを考えていくことになった。一般的な描画の発達論、例えば、リード、ローウェンフェルド、ウィルソン (Read, Lowenfeld, Wilson) を見るまでもなく、発達の過程でこどもたちが必ず通るパターンの一つとして、「絵の中に物語を作りあげる」という特徴が普遍性としてある。そこでその物語を、一枚の絵ではなく、パネルの連続した絵という形で、それもマンガ(コミック)形態の特徴の一つである4コマという形で表現するカリキュラムを作成してみた。「4コマ」つまり「起承転結」の形で表現すること、日本では一般的な4コママンガの表現方法だが、偶然に米国において、文章を組み立てる基本的な方法論が「起承転結」と全く同じ4つの展開「Introduction, Supporting sentence, transition, and conclusion」であることを発見し、これを文章ではなくヴィジュアル(Visual)、つまり絵を使って4つの展開パターンを表現する、日米共通のヴィジュアルリテラシー(Visual Literacy)を高める効果的なカリキュラムとして実施することとした。

2001年カリフォルニア州立大学チコ校の教員養成プログラムの中で、カリキュラムの一例として構想から始めたこの4コマアートレッスンが7年という年月を経て、一般公募という形で世界から作品を集めるという形で展開していくことになった。その成果を展示会として紹介できることをとてもうれしくまたありがたく思うと共に、今後巡回として展開していく中で、巡回各地でまた新たな作品が集まり、各地のこともたちの声が大きく響き渡り、私たちの世界がまた新たな視点で再認識されることを、そしてよりよい世界になっていくことを、少しロマンティックすぎると思いながらも願わずにはいられない。こどもたちに未来があるか、そしてその未来を私たち大人はちゃんと残していけるのだろうか。こどもたちの声を通して今私たち自身が真剣に考える時期に来ているのだと切に思う。

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