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Sunday, December 5, 2010

最終版 教育美術連載 原稿(2010年12月号): 米国における多文化主義の真実: 「美意識」に表れるグローバリゼーション

下記「教育美術」12月号原稿の最終版です。図版は雑誌の方に掲載されていますので、そちらを原稿と一緒にご確認いただければ幸いです。徳

図1:図録27頁上段右「オレンジ、ピンク、それとも赤?」米国大学生作品(パステル)
図2:図録30頁上段左「あと5ポンド(2キロ)少しだけ」」米国大学生作品(パステル)
図3:図録30頁上段中央「マリリンあなたはどこへいるの」米国大学生(中東からの留学生)作品(マーカー)
図4:図録26頁上段右「アメリカの美(アメリカ何と美しき国)」米国大学生作品(油彩)
図5:図録30頁下段右「それは増殖続ける」米国大学生作品(コラージュ)

4コマアート巡回展示会作品紹介(12月号):
(仮題)米国における多文化主義の真実:
「美意識」に表れるグローバリゼーション
October 30, 2010
Masami Toku

この連載を書かせていただいて9回目、今年最後の原稿12月号である。毎回原稿を提出した後、だいたい次号の作品リストとそれに合わせた内容を頭に浮かべているのだが、その通りになった試しがない。同僚たちとの会話の中から、TVから流れてくる報道から急に別のスイッチが入り、思考がどんどんそっちの方へ。そうなるともうそれにとりつかれ元々の予定原稿には戻れなくなってしまう。最初からやりなおしそして涙。でも今回は違った。この4コマアートの公募作品解説を書き始めた当初から、必ず書こうと思っていたテーマがいくつかあるが、今回はその内の一つ「多文化主義」。これを元に「美意識(価値観)」の文化による相違について、「公募B」5作品を見ながら解説してみたい。

他の多くの国、例えば米国と異なり日本は国策として移民を受け入れる体制にはなっていないので、基本的には「多文化主義(multi-culturalisum))という概念は存在せず「単文化主義(mono-culturalism))に分類されてしまいがちである。が、これに「地方」をつけ「地方多文化」と置き換え、地方に視点を移し日本を俯瞰してみると多種多様な文化が存在することは疑いの余地がない。そう日本も多種多様な文化の国なのである。それでは「美意識」についてはどうか。時代に寄って変化はあるものの、現代においては「美意識」はひとつの価値観に支配されていることに気付く。おもしろいことに多文化主義をほこる米国においても、特に人に対しての「美意識(価値観)」に統一傾向が見えるという点がおもしろい。それがこの4コマにも如実に表れている。「美意識(価値観)」のグローバリゼーションである。

まず作品1「オレンジ、ピンク、それとも赤」(図録27頁上段右)。カリフォルニア出身のアーティスト 「ティエバウド(Wayne Thiebaud)」のカラフルな口紅の静物画を元に、多種多様な色の口紅で化粧する女性を誇張。それぞれが個性的で美しいことを言及している。図2と3は同じウォーホールの「マリリン」を元に全く別の2作品に変化させている。まず図2は現代アメリカが抱える若者病「拒食症」について。ビルボード宣伝広告によって誇張されたアメリカの美意識(例えば有名ファッション、カルビンクラインの病的にやせたモデルたち)によって視覚的にコントロールされた彼らの美意識には「健康美」という言葉は存在しないかのよう(日本も同様か)。図3は実はサウジアラビアからの留学生作品。アメリカのセックスシンボル「マリリンモンロー」に異なる国の女性の典型イメージを重ね合わせる衣装(ヘアピース)を付け変身させることによって、「美しさ」の価値観は文化によって異なることを訴えている。イスラムの黒いベールに隠されたマリリンの怪しい瞳だけが妙に色っぽい。図4&5はまた一般的に米国の抱える過食の問題。「ファーストフード」の味に慣らされてしまった味覚は一生かわらず、食のバランスを崩し、過食へと駆り立てる。拒食症も過食症も同じ病根を抱える現代病であり、これは米国のみならず日本を含め世界に広がりつつ有る、悪しき食のグローバリゼーションとも言えるかもしれない。

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