下記は「教育美術」2010年12月号の下書きとして書き留めていたもの。最終版をこれを短くしたもの。教育美術を購読いただければ幸いです。
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4コマアート巡回展示会作品紹介(12月号):
(仮題)米国における多文化主義の真実:あくなき美の追求
October 30, 2010
Masami Toku
この連載を書かせていただいて9回目、今年最後の原稿12月号である。毎回原稿を提出した後、だいたい次号の作品リストとそれに合わせた内容を頭に浮かべているのだが、その通りになった試しがない。どういうわけか締め切り寸前に全然違う内容になってしまう。同僚たちとの会話の中から、TVから流れてくる報道から急に別のスイッチが入り、思考がどんどんそっちの方へ。そうなるともうそれにとりつかれ元々の予定原稿には戻れなくなってしまう。でも今回は違った。4コマアートの公募作品を見たときから、必ず書こうと思っていたテーマがいくつかあるが、今回はその内の一つ「多文化主義」を元に「美意識(価値観)」の文化による相違について、「公募B」5作品を見ながら解説してみたい。
他の多くの国、例えば米国と異なり日本は国策として移民を受け入れる体制にはなっていないので、基本的には「多文化主義(multi-culturalisum))という概念は存在せず「単文化主義(mono-culturalism))に分類されてしまいがちである。が、これに「地方」をつけ「地方多文化」と置き換え、地方に視点を移し日本を俯瞰してみると多種多様な文化が存在することは疑いの余地がない。「美意識」についてはどうか。時代に寄って変化はあるものの、現代においては「美意識」はひとつの価値観に支配されている。おもしろいことに多文化主義をほこる米国においても「美意識」特に人に対しての価値観がひとつという点がおもしろい。それがこの4コマにも如実に表れている。
まず作品1「オレンジ、ピンク、それとも赤」(図録27頁上段右)。カリフォルニア出身のアーティスト ティエバウド(Wayne Thiebaud)のカラフルな口紅の静物画を元に、多種多様な色の口紅で化粧する女性を誇張することで、それぞれが個性的で美しいことを言及している。図2と3は同じウォーホールの「マリリン」を元に全く別の2作品に変化している。図2は現代アメリカが抱える若者病。ビルボードによって誇張されたアメリカの美意識、やせることこそ美しいに踊らされた若者達(有名ブランドカルビンクレーン。拒食症に陥ってしまった若者達を皮肉っている。
「美意識」のグローバリゼーションである。
この原稿を執筆途中でNAEA(National Art Education Association:米国美術協会)からメールが入った。8月号の中で紹介した来年度シアトルで開催の学会発表へプロポーザルが選択されたとの通知である。3件申請した中2つ受理。その内のひとつが、幸いな事にこの4コマアートの日米比較分析。申請総数1,500件あまり、その中から通ったのが900件。3/17−20の4日間に渡って、美術教育に関するありとあらゆるテーマが理論と実践を交えて発表されることになる。2000年にロスアンジェルスで開催されてから10年振りに西海岸へ、それも初めてのシアトルでの開催。米国のみならず世界各地から約5千人余りの参加でにぎあう世界最大の美術教育学会。今から来年の春が楽しみ。
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